マニュアル屋の随想

数打って当てる

恐縮です。
 
 
工場の設備投資を後押しする「ものづくり補助金」は中小中堅企業様にとって大きなアドバンテージを運んできてくれる存在だと思います。
 
 
そこで、このブログの場では、長年に渡り蓄積した私の頭の中にある岐阜尾張における「ものづくり補助金」の考え方を備忘しようと思います。
 
 
私自身の備忘ながら、何かしら、あなたのお役に立てることがあれば、私も嬉しく思うのでございます。
 
 
さて、
 
 
前回は、「ものづくり補助金」の成否に大きく影響する「採択率」という概念について書きました。
 
 
日本全国の採択率と、それを受けて書き手の売上の算段としての採択率が決まり、多くの場合、書き手の採択率は書き手自身にとって固定的なものであるということを申し上げました。
 
 
一度に数多くの企業の申請に関わる方であるほどこの傾向にあるでしょう。
 
 
今回は、申請書作成代行業界における一般的な構造である
 
 
(1)書き手の頭の中の採択率は一定である。
 
(2)書き手の頭の中の採択率は一定なので、申請件数(母数)を増やす工夫をこらす。
 
(3)不採択のリスクは取れないので、料金体系はそれを前提としたものになる。
 
 
の中の(2)について申し上げます。
 
 
書き手の頭の中にある採択率は一定です。
 
 
ご自身が50%の採択率だと思う書き手の方は、50%以上にも以下でもなく、50%だと思い案件に関わります。
 
 
また、同様に70%だと思うている書き手の方は、どのようなお客様も70%だと思うて関わります。
 
 
ですので、書き手同士で食事など行きますと、大体自身の採択率と見込をシェアし合う光景が見られますが、逆に言えばどんなお客様も落ちる可能性があると考えて関わっているものなのです。
 
 
その意味で知らず知らずに博打が起きていると言えるでしょう。
 
 
この感覚は、私自身が数多くの書き手の方々やもの補助に挑戦された企業の方々と関わらせていただき、感じたことに過ぎません。
 
 
では、書き手の頭の中にある採択率が常に一定であるとどうなるのでしょうか?
 
 
それは、売上を上げる、確保するためにいかにして数を追うかを考えることになります。
  
 
70%の方は10件書けば7件分の採択ができ、20件書けば14件分の採択が得られるという事です。
 
 
では、数多く書くためには、どうすればいいのでしょうか?
 
 
【数多く書くための工夫】
1.外注を利用する。
2.チームを編成する。
3.同じ機械・同じ業界を数多くそろえる
4.テンプレートを使い回して効率化を図る

概ね、このような感じでしょうか。
 
 
1.と2.は書き手の「業界」においては割とよくある手法です。営業に来る先生やヒアリングに来る先生が外注、又は「パートナー」に依頼して申請書をライティングしている可能性がゼロではありません。
 
 
実際に私自身も外注として関わっていた時期もございます。
 
 
これらは、手法・スタンスですので良し悪しはないと思うています。あくまでもこのような業界です。ということです。
 
 
ただし、どうしても情報共有が甘くなったり、ニュアンスが伝わり切れず、結果としてヒアリング担当者にとっても書き手にとっても痒い所に手が届きにくいのが現実でしょう。
 
 
3.の同じ機械・同じ業界を数多く揃える場合、もの補助が審査項目として求められている「差別化」や「独自性」を意識する必要があります。
 
 
プロの書き手はその点を重々留意されているでしょうが、中には効率化を図る余り「数打てば当たる」と言わんばかりに、課題や解決策を使い回す書き手もいるかも知れません。
 
 
御社独自のカラーが出ているかどうか、完成した申請書をよくご確認になり、努々書き手のチェックを怠らない様にされることをお勧めします。
 
 
最後に4.ですが、これは①~③と組み合わることで大きく効率化が図られます。
 
 
実際に私自身も自作のテンプレートを利用します。
 
 
1.と2.の場合で、初心者や忙しい方、チームで品質を整えたい時には有効な手段となるでしょう。
 
 
3.においても効率化が更に進むはずです。
 
 
ですが一方で、視覚的に申請書が似偏ったものになりやすく、「差別化」や「独自化」ができているように見えなくなってしまいます。
 
 
申請数が多くなるほど「埋めればいい」と思いやすくなり、テンプレート本来の「ゼロベースで考えるためのもの」としての効用は消えやすくなることもあります。
 
 
勿論これらの手法の数々は、プロの書き手の方々が、より多くの申請に関わり、依頼を断ることなく挑戦される企業の助けになるための工夫であると言えるでしょう。
 
 
このような業界の構造をご理解いただき、依頼者側にとって知らぬ間にデメリットになりやすい構造があることをご理解された上で、成果物をチェックされることをお勧めいたします。
 
 
最後までお読み頂きありがとうございます。
当ブログは私自身の備忘に過ぎませんが、あなたにとって何かしらお役に立てていれば幸いです。
 
 
では、再びご縁がありますことをお祈り申し上げます。

TIME2019.11.18  業界について

関連記事