マニュアル屋の随想

基本の徹底

恐縮です。尾張で技能伝承のご支援を専門に行うマニュアル屋でございます。

この技能伝承というテーマですが、
技能というのは、職人さんが日々の反復作業で
試行錯誤を重ねて研鑽した技術の集大成を
私は、このように呼んでおります。

技能の例で言いますと、
職人さんが日々、繰り返し繰り返し、
やっては改めやっては改めしながら、
ものすごく卓越した技術を身に付けていき、

公差何1/100mmの金属切削を手作業でこなしたり、

厚みが極薄のスポンジなんかを皺なく・空気も入り込まず
ピシッと接着したり、

公差の厳しい製品を作るための金型や治具を
調整しながら、精密に組付けたりと

それぞれの業界には、それぞれのワザがあります。

それぞれの会社には、それぞれの会社のワザがあります。

ただし、職人さんがそれを教えられるかどうか、

新人さんがすぐに身に付けられるかどうか
は必ずしもYESではありません。
岐阜尾張における多くの企業様が、
教える・教わるのギャップに大変な苦労を
していらっしゃいます。

では、職人さんの技術を伝承するにはどのように
考えれば良いのでしょうか。

私が師事しているマニュアルの第一人者である
株式会社クオーレの工藤正彦先生からは

仕事のプロフェッショナルになるためには、
基本を徹底する必要があり、
基本を徹底するためには、マニュアルを活用するのが
最も近道である。
という考え方を教わりました。

ベテランの職人さんもいきなり
凄まじい技術を身に付けられたワケではありません。

幾度の反復作業を通じて「仕事の基本」を身に付けられて
それを台にして、自分なりの工夫とセンスを積み重ねて
今の凄まじい技術を身に付けるに至っています。

御社にとっての「仕事の基本」をまずは

1.御社の理念や方針を基にして、目的・期待を明確にした上で
  確定し、それを基に身に付けるべき「仕事の基本」を
  明確な言葉にします。

2.明確な言葉となった「基本」を
  徹底的にその言葉通りの方法で反復します。

3.不都合や不適合があれば、
  あるいはより良い方法を模索して、
  都度、改善・調整を施していきます。
  改善・調整を加えたら、
 「基本」を定義する言葉も忘れずに変えていきます。

上記の「基本」を徹底するための仕組みを
具現化して、最も効率的・効果的に行いうるものが
業務マニュアルでございます。

マニュアルという方式で
御社の業務をできる限りのギリギリまで
明確で詳細なことばにする
挑戦を重ねて、言葉化できるところまで
作り込んでいきます。

これは上記の1.に当たるもので、
できる方・やっているという方が割と多くいらっしゃいます。

ところが、難しいのが2.と3.です。

すなわち、マニュアルの「活用」と「改訂」です。

この「活用」ですが、現場にてお目にかかるのは、

「私はこの作業はやりたくない」
または、
「私はこの作業をやりたい」
という方です。

仕上系の仕事や初品検査で
このようなことを仰る方をたまに
お見受けします。

御社はそのようなことは無いでしょうが、
日々流れる部品の組立やプレスの業務は
手順通りに段取り替えができれば、
NO検査でも、大体不具合は無いだろうと
検査をおざなりにしたり、チェックシートも
何となく書かれる状態に陥りがちです。

「やりたい/やりたくない」と
「好み」で仕事をされますと、
当然に仕事の成果や方法は常にばらつきます。

マニュアルの活用においても一緒で、
「好み」でやる・やらないが生じれば
当然に成果は生まれません。

次に「好み」と同じくらい、
現場でお目にかかるパターンとして、
「この作業をやらなければいけないからやる」
というケースです。

こちらも御社では、無いことでしょうが、
日々、不良・不具合が発生しないと
見ていないところで、
初品検査や中間検査をだんだんと
手を抜いてしまうことがあります。

「やらねば」とか「べき」ですと、
発想の源ががネガティブなため、
行動を継続するのも難しいかもしれません。

では、基本を徹底させる上で好ましい心構えとは
どのようなものをいうのでしょうか。

それは
「作業を行うことが当然である」
「やることになっているからやる」
という考え方だと私は思います。

これは、作業の一部として
行うルールであり、行って当然だから
感情や意識等を介在させるまでもなく
ただ「やる」という態度です。

このような態度を組織の内部に宿し込み
マニュアルを活用することが「当然である」と
認識されれば、順調に
作成 > 活用 > 改訂の
サイクルは回り出すでしょう。

基本を徹底する上では
「やって当然」という
レベルでマニュアルを活用する態度を
組織に通底していきたいところでございます。

恐縮です。技能伝承支援専門のマニュアル屋でございました。

TIME2019.05.23  考え方,雑感,マニュアル作成

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